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そんな日もあります。

またの名をすれ違い。




クロモドの魔力の手紙がアンジェリナによって運ばれるのは、もういつものことで。週に一度の割合でマナルス山にいるとそれは届いた。アエルロトがこうして山に戻ってくるからか、特に咎められることもなく、外泊も許されている。長くかかるときには、連絡を入れているが時折イザンの気配を感じるのは間違いではないだろう。

その日アエルロトはやることを終え、支度を整えると山を下りた。日程に余裕はあったが、何故か気持ちが急いた。


ところが。
「おや、お留守のようですね……。」
クロモドの家には鍵がかかっていて開かなかった。手紙は翌日を指定してあったからか、アエルロトが今日中に来ることは想定外だったのだろう。居れば今日のうちにと思ったが、これでは仕方がないと息を吐く。
しかしこれから山に戻るには少し遅い。日を跨いでしまうことを考慮して、宿にでも泊まろうかと、庭を抜けて階段を降りたところで見覚えのある少年に会った。息を切らせている様子を見るに、村を歩くアエルロトの姿を見つけたのだろう。
「……!」
少年は一度だけ立ち止まると、鍵をアエルロトに見せて階段を駆け上った。それがクロモド邸の鍵であることは明白で。彼によってすぐに玄関は開かれた。
「ありがとうございます。」
礼を言うと、少年、レッドは頭を下げてすぐに村の方へと戻って行った。彼には彼のやるべきことがあるのだろうと察して、アエルロトはもう慣れてきた家の中を歩く。
ほんの少し香る薬剤と植物の香り。クインシーがいないところを見ると一緒に出掛けたのだろう。ほんの少しちくりと痛む心に、アエルロトは苦笑を漏らした。

あれは、私にとって妹のような存在だ。あんたとは違う。
私にとっての唯一は、あんただけだ。

彼は確かにそう言った。この痛みは一緒に行けなかったことが単に悔しかったのだと。そう結論付けてアエルロトは荷物を降ろすべくクロモドの私室へと入った。
「さすがに疲れましたね…。」
荷物を下ろし、適当に椅子を探したが見当たらず寝台に腰を下ろす。今日は山で押していた仕事をなんとか終えてから来たせいか、疲れが溜まっていた。ここまで来てクロモドがいなかったことも、疲れの一因になっている気がしてアエルロトはそのまま寝台に横になった。
「少しだけ…。」
嗅ぎなれた香りに包まれ、重くなった瞼をそのまま伏せる。すぐにも、口からは寝息が聞こえ始めていた。


「……。」
「どうしたのよ?クロモド。」
「アエルロトが来ている。」
「えっ?明日じゃなかったの?」
クインシーの声をよそに、クロモドはすぐにその姿を探し始めた。リビングにもキッチンにも、研究室にもその姿はない。いったいどこに、と思い始めたところで私室へと足が向いた。灯りもついていなかったがそこには人の気配があって、クロモドはそっとその扉を開けた。
「…ここにいたのか。」
寝台の上で丸くなって眠るアエルロトの姿を見つけて安堵の息を吐いた。
「難しい案件があるのだと言っていなかったか…?」
数日前、アエルロトから抱えている仕事が少し厄介なのだと聞かされていた。おそらく時間がかかるのだろうと推測して明日を指定したはずなのだが、とクロモドは考え込む。
「まさかそれを押してきたのではあるまいな…?」
呟きに眠ったままのアエルロトは答えない。よく見れば外套も着込んだまま眠り込んでいる。傍に腰を下ろし、その横顔を覗き込んだ。

貴方が私に逢いたいように、私も貴方に逢いたいのです。

そう言ってほほ笑んだアエルロトを思い出し、クロモドは眠るアエルロトの髪を梳く。
「仕方ない、夕飯は私が用意しよう。」
言葉の割に口元は笑っていて、指をすぐに離し腰を上げた。露わになっている頬へ口付けをし、部屋を出る。
クインシーに何事かを言われたが、クロモドの耳には全く入っていなかった。



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プロフィール

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サキ
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非公開
自己紹介:
サーバー:アテナ
遠征隊名:非公開
宛もなく流離う放浪者
クロモドとアエルロトが好き過ぎる人です

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