結界陣の箱庭
先生と放浪騎士と、ゆかいな仲間たち
事の始まり。
総てはここから始まった。
一つ一つが叶えられていくのを、どんな気持ちで見つめていたのか、気付けばシュバルマンもピンコもナギもソーマもイリシアも、そしてルコやエルピントスも自分の目的を果たしていた。
戦争は終わり、人々が圧政に苦しんだ時代は終わりを告げた。
神々の悪戯によって、引き裂かれた家族は再会を果たし、己の役割を忘れかけていた者はそれらを思いだし、それぞれの道へと再び歩き出す選択を迫られた。
クロモドも例外ではなかった。シュバルマンと同じものを探し、そして目的を終えたシュバルマンから探し物を託されることとなる。
「待たせたな。これを持って行ってやってくれ。」
「…ああ。」
受け取った治癒のオボロス。どれほどの潜在能力を秘めているのか、魔力とは違ったものを発するそれに見入る。すると手の内を見つめる視線に気づいたクロモドは、顔を上げた。視線の主など分かり切っている。
「それで、彼女を救うのですね。」
そう言って笑った彼を、捕まえておかなくてはならないとクロモドは思った。
「そうだ、お前と一緒に帰る。」
「私と一緒に、ですか?しかし…」
アエルロトを見守る二つの視線。それはディオネのパルティオ、イザンとアンジェリナだった。彼らを振り返るアエルロトは、クロモドと共に行けないと言った。
「私は、もう行かねばなりません。元の場所に帰らないと叱られてしまいます。」
ジャガーとの死闘の末、アエルロトは大きなケガを負った。遠征隊員として何とか最後まで共に歩くことはできたが、これ以上の長旅は寿命を縮めると宣告された。一度は帰って静養する必要がある。マナルス山にはその準備があると、二人に呼ばれたのだった。
「無駄に長生きをするつもりはありませんが、報告もしなくてはなりません。」
今まで勝手に動いてきた分の借りを返すことはできなかったが、とアエルロトは表情を曇らせる。
「そうか、残念だ。」
「…そう、思って下さいますか。」
ありがとうございます、とアエルロトは頭を下げた。しかしクロモドは首を横に振った。
「私は目的を果たせた。それで十分だ。だが、アエルロト。」
「はい。」
「私は手の内に入れたものを、簡単に手放すつもりはない。」
恋仲として、旅が終わったから関係が終わるなど、絶対にさせないとクロモドは宣言した。
「クロモドさん……?」
「お前のことだ、この旅が終わったら、などと考えていたのだろうが、これで終わりにする気など、私には毛頭ない。」
はっきりと言い切られた言葉に、アエルロトの漆黒が揺らぐ。
「何度でも、便りを出し、お前を呼ぶ。グリンデルの私の家はわかるだろう。いつでも来い。」
そういってクロモドがアエルロトの手を握る。
「いつか、共に歩くことのできるときがくるまで。」
アエルロトが泣くことはなかったが、握られた手はなかなか離すことができなかった。
一つ一つが叶えられていくのを、どんな気持ちで見つめていたのか、気付けばシュバルマンもピンコもナギもソーマもイリシアも、そしてルコやエルピントスも自分の目的を果たしていた。
戦争は終わり、人々が圧政に苦しんだ時代は終わりを告げた。
神々の悪戯によって、引き裂かれた家族は再会を果たし、己の役割を忘れかけていた者はそれらを思いだし、それぞれの道へと再び歩き出す選択を迫られた。
クロモドも例外ではなかった。シュバルマンと同じものを探し、そして目的を終えたシュバルマンから探し物を託されることとなる。
「待たせたな。これを持って行ってやってくれ。」
「…ああ。」
受け取った治癒のオボロス。どれほどの潜在能力を秘めているのか、魔力とは違ったものを発するそれに見入る。すると手の内を見つめる視線に気づいたクロモドは、顔を上げた。視線の主など分かり切っている。
「それで、彼女を救うのですね。」
そう言って笑った彼を、捕まえておかなくてはならないとクロモドは思った。
「そうだ、お前と一緒に帰る。」
「私と一緒に、ですか?しかし…」
アエルロトを見守る二つの視線。それはディオネのパルティオ、イザンとアンジェリナだった。彼らを振り返るアエルロトは、クロモドと共に行けないと言った。
「私は、もう行かねばなりません。元の場所に帰らないと叱られてしまいます。」
ジャガーとの死闘の末、アエルロトは大きなケガを負った。遠征隊員として何とか最後まで共に歩くことはできたが、これ以上の長旅は寿命を縮めると宣告された。一度は帰って静養する必要がある。マナルス山にはその準備があると、二人に呼ばれたのだった。
「無駄に長生きをするつもりはありませんが、報告もしなくてはなりません。」
今まで勝手に動いてきた分の借りを返すことはできなかったが、とアエルロトは表情を曇らせる。
「そうか、残念だ。」
「…そう、思って下さいますか。」
ありがとうございます、とアエルロトは頭を下げた。しかしクロモドは首を横に振った。
「私は目的を果たせた。それで十分だ。だが、アエルロト。」
「はい。」
「私は手の内に入れたものを、簡単に手放すつもりはない。」
恋仲として、旅が終わったから関係が終わるなど、絶対にさせないとクロモドは宣言した。
「クロモドさん……?」
「お前のことだ、この旅が終わったら、などと考えていたのだろうが、これで終わりにする気など、私には毛頭ない。」
はっきりと言い切られた言葉に、アエルロトの漆黒が揺らぐ。
「何度でも、便りを出し、お前を呼ぶ。グリンデルの私の家はわかるだろう。いつでも来い。」
そういってクロモドがアエルロトの手を握る。
「いつか、共に歩くことのできるときがくるまで。」
アエルロトが泣くことはなかったが、握られた手はなかなか離すことができなかった。
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遠征隊名:非公開
宛もなく流離う放浪者
クロモドとアエルロトが好き過ぎる人です
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