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迎えに。

たまには出向くこともあるのです。

重い風邪をひいてしまいしばらく更新が滞っていました。
療養しながら頃合いを見て書きたいと思います。



「アエルロトへの面会を。」
クロモドは門前でそう告げると、門番は弾かれたように中へと駆け込んでいった。
ここは術法師の総本山マナルス山。
アルポンスを従え、威圧感を門番へ無意識のうちに与えながらも、返答を待つべく佇んでいた。
「どうぞ、お入りください。アリエル様のお部屋までご案内いたします。」
場所はわかっているから要らんと言っても従者はついてくるので、クロモドは諦めたように息を吐いて術者の後ろを歩いた。
既に今日伺うことは手紙で本人に伝えてある。
わざわざ出向いたのは、アリエルと呼ばれるアエルロトを見たかったからではなく、単純にマナルス山へ迎えに来た方が次の目的地が近かったからという至極単純なものだった。
「アリエル様、クロモド様がお見えになりました。」
「御足労いただき、ありがとうございます。」
アエルロトが見せる「普段」の笑みがそこにあった。
「もう下がって良いですよ。」
有無を言わせない笑みに、従者は頭を下げて部屋から下がる。室内にはクロモドとアエルロトだけになる。
「ここまで長かったでしょう、おかけになってください。アルポンスはどうしました?」
「アエルロト。」
言葉を遮るようなクロモドの声に、アエルロトがお茶を淹れようとした手を止める。
「クロモドさん?」
「準備はできているのか。」
「ええ、いつでも出られますが…先を急ぎますか?」
落ち着かない様子にも見えるクロモドに、アエルロトは首を傾げた。
「ここの空気は、あまり好きではない。」
まるで他者を拒むような、そんな空気を孕んでいるように感じるとクロモドは言った。
それにドアの向こうにある気配はおそらく好奇のもので、好意ではない。村から出て旅をしたことで多少の耐性はついたが、やはり人の視線と言うものはあまり好きではない。
アエルロトもそんなクロモドと視線に気付いたのか、茶器から手を離し黒衣を取る。
「では、出発しましょうか。休憩は近くの村でとればいいですしね。」
アエルロトを視線で追っていたクロモドも立ち上がる。
扉の前の気配がすぐに散ったことを知って、クロモドは隠すことなくため息を吐いた。その横顔を見てアエルロトも苦笑いをする。
「参りましょうか。」
「ああ。」
遠征隊と旅をしている間に山の空気を忘れかけていたアエルロトにとっても、今の様々な感情を含む眼差しはあまり居心地のいいものとは言えなかった。
結界陣を張った頃よりもそれははっきりと表れているようで、遠巻きにしながらも纏わりつく視線にさらされるよりは、こうしてクロモドと歩きながら旅をしたり、クロモドの家で研究の手伝いをしていた方が気が休まる。

本当は、山を下りてしまいたいのですが。

未だ片付かない諸々に、アエルロトはほんの少し憂鬱さを覚えながらも、今はこうして隣に感じられる存在に癒されておこうと決めた。
「どうした?」
「いえ、…幸せだなと思っただけです。」
そう言葉にしてほほ笑むと、クロモドの口角が上がった気がした。

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プロフィール

HN:
サキ
性別:
非公開
自己紹介:
サーバー:アテナ
遠征隊名:非公開
宛もなく流離う放浪者
クロモドとアエルロトが好き過ぎる人です

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