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眠り誘う揺らぎ。

眠るって言うのは大事なことだと思うんです。

いつも気侭に眠れる環境があるのは、いいことですね。






「アエルロト。」
声をかけながら部屋に戻ると、その名前の主は既に寝台と仲良くなっていた。以前と変わらず横を向き、丸まって眠るその姿は、旅をしていたころを思い出させる寝方で。思わず手を伸ばし、その黒髪に触れようとして止める。以前、触れた途端に彼は目を覚ましてしまった。
それはまるで、クロモドの傍でも気を抜けないことを示しているようで、寂しさと失望を覚えたことがあった。今自分はおそらくアエルロトに眠っている間に髪を梳かれても、起きたりすることはないだろう。それは、アエルロトの傍ならば安心できるという心の表れでもあって。
「…。」
けれど、こうしてよく隣に眠ることが増えた今ならば、とわずかな希望を胸にもう一度手を伸べる。柔らかな黒髪に指先が触れ、ゆっくりとその質感を確かめるように梳いても、アエルロトが起きることはおろか、身じろぎすらすることはなかった。
「……。」
無言の内に、喜びが内心を占めるのがわかる。穏やかな寝息は、クロモドの心を安心させた。しかし耳の後ろへと指が触れ、髪を撫でつけたときに初めてアエルロトの口から声が漏れた。
「ん、……。」
すぐに瞼が震え、薄暗い部屋の中で漆黒が瞬いた。静かに周囲を伺うような動きのあと、その瞳はクロモドを映す。すぐに顔に表情が現れた。
「クロモド、さん…?ああ、すみません、眠ってしまったんですね…。」
「寝てろ。」
「…え?ですが、何か用事があったのでしょう?」
未だ寝間着ではないクロモドの姿を見て、すぐに用事があったことを察したアエルロトに、クロモドは溜息を隠さなかった。
「そんなところに洞察力を働かせなくていい。寝てろと言ったんだ。大人しく寝ていろ。転寝は体が疲れている証拠だ。」
有無を言わせない口調と、すでに寝間着を着ていたアエルロトはこれ以上クロモドの機嫌が急降下しないように起こし掛けていた体を再び寝台へと横たわらせた。
「クロモドさんも、早めに寝てくださいね…?朝起こすのが大変です…から…。」
おやすみなさい、という声は闇に溶けいるようだった。再び安らかな寝息を立てて眠り始めたアエルロトに、クロモドは笑みを隠せない。すぐに髪へ触れることはできないが、半端にかかった毛布を引き上げてもアエルロトは少しその中に埋もれただけで起きようとはしなかった。
「いい夢を。」
こめかみに口付けを落として、クロモドは再び研究室へと戻っていった。


翌朝、アエルロトがどんなに起こしてもクロモドは日が高くなるまで起きることはなかった。あんたが寝ていて手伝わなかったからだ。今日は休む、とまで言い出し、まるで枕のようにアエルロトを抱き締めたまま惰眠を貪る大魔法師の姿があった。
「こ、今度は起きますからね…!」
と宣言するアエルロトに、
「眠らせる方法がないとでも思っているのか?」
と大人気なく妙な対抗をするクロモドであった。

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サキ
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サーバー:アテナ
遠征隊名:非公開
宛もなく流離う放浪者
クロモドとアエルロトが好き過ぎる人です

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