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目覚め。

お泊りの翌日。朝のいちゃいちゃ。
糖度高めです。



目覚めてその薄い青がとらえたのはすらりと伸びた細い腕だった。グリンデルは位置的には北にあるせいか朝は冷える。いくら服を着ているからとは言え寒いだろうと、クロモドは毛布を引き上げた。
「ん…。」
声が聞こえたが、毛布の中に埋もれただけで起きる気配はなかった。
クロモドの白い腕が細腰を抱き、黒に埋まる視界に瞬く。長旅を終え、山での生活をしているせいか当時より髪の艶がいい。触れるとしっとりとしているのがわかる。自分とは違い、髪を伸ばさないアエルロトの項は晒されたまま。
吸い寄せられるように口付けた。
「……。」
以前ならこのように触れ合うとすぐ起きてしまっていたが、緊張を強いられていないことや戦いの日々が終わり平和になったからなのか、アエルロトは目を覚まさなかった。
よく眠れているならばいいと思う。旅をしているころのアエルロトの眠りはひどく浅かった。
しっかりと両腕で抱き締め、あと少しとクロモドも瞼を伏せる。互いの体温が心地よい。

目覚めたときにまるで護られるように包まれていることに気付く。こうなるまで気付かないのは珍しいと自分でも思う。
けれどここまで安心していられるのはこの腕の中であることに背後の人は気付いているのかどうか。
ここは、安心して眠っていい場所。そう心から確信しているから。
気付けば日が随分高いところから射し込んでいる。いつもならクインシーが叩き起こしに来るところだが、昨晩遅くまで研究室にこもっていたのを知られていたせいか、室外からは物音ひとつ聞こえてこない。
「……。」
振り返ろうと身を捩ろうとすると、抑え込むように腰に巻きついている腕の力が強くなった。
「…クロモドさん…?」
声に答える気配はない。寝息が項にかかってくすぐったいとアエルロトは笑った。
「え?」
項に吐息ではなく、クロモドの髪がかかって何かを押し当てられる。それが額だと気付いた時には頭が肩口に移動して強く抱かれていた。
「クロモドさ…」
驚いて振り返ると唇を塞がれる。朝一番に交わす口付けにしてはとても濃厚なそれを受け、アエルロトの眉が悩ましげに寄せられた。
「……っ…」
やがて濡れた音を立て、離れる唇にアエルロトは溜息にも似た息を吐いた。
「おはよう、起きていたのか。」
「…おはよう、ございます…今起きたところです。」
唇を拭われ、見上げると薄い水色が見詰めてくる。普段はあまり触れてこないが、互いのパーソナルスペースが0に限りなく近くなるとこうしてくる。
それはまるで、甘やかすようでもあった。

甘い時間がただ過ぎていく。日はもう真上に近かった。それでも未だ、シーツの波に二人。黒髪を梳き、手触りを楽しむ。
「今日、発つのか?」
「……いえ、今回はまだこちらにいますよ。」
長旅からようやく帰ってきた期待の術法師は、一度山に返すとなかなか出てこれない。それを知るからか、アエルロトは苦笑を交えながら答える。
「それでこそ、なのだがな…。」
「何の話ですか?」
状況を知りながら、それでもアエルロトを離す気などなくて。所有を裏付けるような赤い印を、誰が咎めることができようか。体を起こすアエルロトを見上げ、言葉を聞く。
「お休みをいただきましたから。クロモドさんさえよければ、一週間から10日ほど。」
「休暇か。」
「はい。」
それこそ後処理に追われ、次いでクロモドの手伝いもしていたのだからアエルロトには文字通り休みなどなかった。出勤日などを定めていないクロモドもまた同様で。
「…たまにはいいか。しばらく、大魔法師も休業だ。」
もう日も高い。しばらくすればクインシーがいい加減起こしてくるだろうと二人で再びシーツに沈んだ。

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プロフィール

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サキ
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非公開
自己紹介:
サーバー:アテナ
遠征隊名:非公開
宛もなく流離う放浪者
クロモドとアエルロトが好き過ぎる人です

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